テレビで格闘技がやっていた。
そういえばこの前のプライドに出ていた
イゴール・ボブチャンチンという選手が羊たちの沈黙の
レクター博士になんとなく似ているなぁ〜と思った。
ミルコクロコップは
定岡正二に似ているとか似ていなくても強引に、定岡正二とレクター博士が殴り合っているシーンを想像して格闘技を楽しんでいます。
今回も
宇野薫という選手が誰かに似ている気がする。赤塚不二夫系の漫画に出てくる人かな?ねずみ男に似ている?と記憶を辿っていたら…。
小学校の頃、同じクラスだったミウラケン君に似ている。僕が初めて出っ歯というのを見たのも聴いたのも三浦君が最初だった。
ねずみ男に似ている三浦君は出っ歯で貧乏だということでみんなに虐められていた。小学生の頃は出っ歯だけでかなり虐められる。
「ミウラケンってどこの県だよ?」
「おまえち、ファミコンないんだってなぁ〜。ビンボー」
「お前、汚いからくるな」
そう言ってみんなに虐められていた。
洋服が汚れている不潔というよりも、体からにじみ出る不潔さというのはどうしようもない。
三浦君は洋服が汚れ体からにじみ出る不潔さという両方を併せ持っていた。
僕はかわいそうだと思いながらも三浦くんは昨日と同じ服を着ていることが多いしみんなが健君を虐めるのでケン君を虐めていた。
でもどこかでかわいそうだ、虐めはいけないという正義感があって、健君に対して二人きりになった時、少しやさしい声をかけていた。
放課後、三浦君と二人だけ図工で居残りになり、なんとなく三浦君のキャッチフレーズを考えようと思って、
「これどうだろう?ミウラケン反対から呼んだらウラミケン!」
まったく意味が分からないがあの時三浦くんは「それいい!最高!」
出っ歯をむき出して笑った。その時、そんなフレンドリーな会話をしたことを少し後悔した。
ある日の給食の時間、三浦くんはサラダを配る係りで1班、2班と順番に配っていた。
僕は3班で、2班から三浦君がサラダの入った器を持ってきた。でも三浦が持ってきたということで口に出さなくても「これは汚い。これ食べると貧乏になるぞ」ということでみんな取らない。
でも僕は違う理由で取らなかった。野菜が好きではない。
「僕もいらないよ。三浦そのまま4班に持っていってくれよ。」
そう言ったら、ナガイ先生がいきなり僕の席に来て、
「お前!なんだ!なんで食べないんだ!三浦がかわいそうだろ!三浦は汚くないぞ!お前立て!」
そんなこと言った憶えはない!と反論しようとしたら、永井先生から殴られ頭にげんこつをもらいました。
三浦君の方を見たらどうしていいのか分からず、目線が泳ぎ出っ歯を必死に口に入れて閉じようとしていました。
翌日、頭にコブができました。一週間異常痛かった。
げんこつの痛みも癒えた頃、駄菓子やさんでたまたま会った三浦君がコーラ味のキャンディーを食べていました。
「まっちゃん。これ食えよ!美味いぞぉ!」
彼が僕をまっちゃんとなれなれしく呼んだことに少しカチンときました。
三浦君が「美味しいよ!!」
僕は潔癖症でラッパ飲みもできない。人が食べている半欠けのキャンディーを食べるというのは拷問にも等しい。
しかも出っ歯の三浦君がペロペロと舐めたキャンディーを食べるなんて…。
僕は断る理由を探していたら、げんこつの痛みが蘇ってきました。
僕はコーラ味のキャンディーをちょっとだけ齧りました。ほんとちょっとだけ。
「ありがとう。三浦!」
そう言ってキャンディーを三浦君に返しました。
その数秒後、僕の目の前で三浦君が念入りに鼻を穿りその指を舐めました。
三浦君を殴りたいと漠然と思いました。
何だかすごく悲しい気持ちになって空を見上げながらチャリンコをゆっくり漕いで家に帰った記憶があります。
あれから20年。山本KID選手に宇野薫選手が殴られているのを見てなんだかすっきりしています。