紫陽花の色。
2003/6/30 紫陽花の色。

先生からアリトメと一緒に学校に来るようにと言われた。それから毎朝アリトメの家に寄ってから学校に行くことになった。

アリトメはアパートのようなマンションの3階に住んでいた。インターホーンを押そうとすると、家の中から母親らしき声がする。「お腹痛いのはウソなんだろ!早く起きないと学校に遅れるよ。」

その後家から何か物を投げたような大きな音がする。

インターホーンを押す。アリトメの兄貴が出てきた。僕は「一緒に学校行こうと思って。」

遠くから母親の声がして「お腹が痛いっていっているのよ。ごめんね。」

しょうがなく僕は一人で学校に行く。先生に聞かれる。「アリトメはどうしている?」

僕は困ったような表情を作った。先生が、「帰りも寄ってあげ、ろ。」

半ば命令口調で言われた。

学校帰りにアリトメの家に寄る。インタホーンを押すと、天然パーマのアリトメが出てくる。

「お前何やってんだよ。なにズル休みしているんだよ。」などと言うような事は言わない。

アリトメの家で一緒にゲームをする。会話はない。アリトメの母親もいない。

午後5時半になると僕は家に帰る。6時になるとアリトメの母親がパートから帰ってくる。

アリトメは4人兄弟みたいだ。僕は兄貴は見たことがあるが他の兄弟は見たことがない。オヤジはタクシーの運転手らしいが見たことがない。母親も聞くのは朝の声だけでほとんど顔を見たことがない。

朝迎えに行くと、時々アリトメがカバンを肩にかけて出てくる。一緒に学校に行くつもりで歩くが途中の舗装されていない小さな石ころが転がっている砂利の駐車場で道草をする。

6時間ぐらい道草をする。ミーラ取りがミーラになって僕も学校をズル休みする。

殆ど会話はなく地べたに座りアリトメはカバンからエンピツを取り出してノートに絵を書き出す。僕は、カバンに入っている世界地図を広げて世界中の首都を覚えたりその国の景色を想像する。

未だに世界で2番目に長い首都のバンダルスリブガワンを覚えているのはそのお陰だ。しかしまだ何の役にも立っていない。

午後3時ぐらいになってゲーセンに行く。カツアゲをしている悪いヤツがいる。僕らは声をかける。「何をしてるんだ?」カツアゲしている悪いヤツは意表を突かれ少々怯む。相手の胸倉を掴み「金を返してやれよ。」

カツアゲをされているヤツを助ける。カツアゲされてたヤツが「お礼です。」お金をくれる。「いいよ。いいよ。」と言うが貰えるものは貰う。

3ヶ月後アリトメは転校した。

その後、噂ではアリトメ一家は心中をした。アリトメは死んだらしい。子供の噂であてにはならない。梅雨に沢山咲く紫陽花を見てアリトメが駐車場で言った一言を思い出す。

「紫陽花って沢山咲いていると色がキモイな。」

アリトメが小学生の頃描いた沢山の紫陽花が咲いた沢山の色を使った絵は文部大臣賞を取った。

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