世界で一番大きな犬。
2002/1/23 世界で一番大きな犬。

小さい頃のボクは犬が大嫌いだった。

ボクが幼稚園に行っている頃。家には大きな犬がいた。どれぐらい大きい犬か。父が犬に乗って散歩することができたぐらい大きな犬。なんていうか怪獣みたいだった。いわゆるムク犬っていうのかな?しかもボク、子供だったし今以上に大きく見えたんだろうね。

なぜか小さい頃から家に犬がいるのに犬嫌いで。そのデカイ犬うるさいんだ。デカイから。ゴリゴリ痒いとこ掻く時普通の犬の倍は音がする。ゴリゴリって。うんちだってうんちなんて可愛らしいもんじゃなかったもん。ちょとその犬が本気になれば人も食えるんじゃないか?ってぐらいな犬。

で、庭で飼っていたんだけど。庭の半分が、犬小屋なの。でかいから。殆ど犬小屋。食べるご飯もすごい量。学んだね。体のデカイやつは、その分だけ食べるって。

犬は嫌いだったんだけど。家に飼っている犬を見るのは好きで。恐いから触ったりはしないんだ。遠くから見る。そうすると、そのデカイ犬「アル」っていうんだ。アルがさ〜。こっちを見るわけよ。ボクと目が合う訳。やつとぼけた顔してるの。何かあるのか?って顔して。

実際何かあるんだ。ぼく。小さな頃でもそれなりに悩みってあるじゃない。生意気にも。アルはそれが分ったような顔してみているんだ。どうしたワタルって。そのとぼけた顔がムカツクんだよね。それでさ〜。アルため息つくんだ。人生ってはかないな〜って。犬に分ってたまるかってんだ。

父がいつも散歩に行けるわけじゃない。小さい頃、父とボクとは殆ど会わなかった。父は夜仕事にいっているから、昼はずっと寝ているんだよね。または出ていて家にいない。それでさ〜。ボクがアルを散歩に連れていく。犬、大嫌いなのに。

アルの犬小屋の扉を開けるんだ。まさに扉。やっぱり入り口も大きいわけ。でその扉を開けると、アルはいきなり走り出して暫くいなくなるんだ。最初の頃は驚いたよ。だっていきなりどっかに行っちゃうんだもん。

でも暫くすると戻ってくるんだよね。アルはなんか走りたいんだよ。庭の半分が部屋だっていってもアルには狭いからね。それで帰ってきたアルはボクの目をみつめて…。


雨の日だったな〜。小学校から帰ってくると、アルがいなくなっていた。あの頃は分らなかった。そんな気にもしてなかった。うるさい大きな犬がいなくなったぐらいにしか思ってなくて。

で最近になって。犬を飼うことになって。最近って言っても7年前からだけど。アルのことを父に聞いて。アルは皮膚の病気かなんかであのままにしても痒がって、いずれは…。ってことだから。注射で…。

26年間生きてきて、本でもどこでもあんなデカイ犬はみたことなかったよ。考えられないほど大きかった。昔は大嫌いだったよ犬は。けど今はまあ好きになった。

今思うんだ。アルに会えたらな〜って。僕が嫌がるアルの背中に乗せてもらって散歩するのに。

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