なぜそうなるのか。
ボクの携帯に「今から帰る。」など間違いメールが送られてきた。何度も来るので「宛先が間違っていますよ。ボクのアドレスはtarutaru2222@docomo.ne.jpですよ」とメールをした。
「ありがとうございます。」と返信が着た。しかしその後も同じ人から何度もメールが間違って入ってくる。「○○ってむかつくよね。」などその人の生活が垣間見れるものまであった。
このままでは不味いだろうとまた「間違って入っていますけど。あなたが送られているメールは相手側に届いているのでしょうかね〜。」というメールを送った。
返信が着た。「送られているようなんですけど…。なぜtarutaruさんにもメールが送られてしまうのでしょう」
ボクの携帯のアドレスには「tarutaru」という文字が入っていたせいか何時の間にか僕はtarutaruさんと呼ばていた。
「差し出がましいかも知れませんがメールアドレスを変更なさった方が…。ボクの方にあなたの愚痴メールまで届いていますし(笑)不味いんではないでしょうか?」
「あ、ごめんなさい。愚痴メールもですか。」「そうなんですよ〜。いろいろありますよね。まあ私を壁と思って送ってくださってもボクは困りませんが…。それはそうとボクはtarutaruさんですか。」「メールアドレスにtarutaruとなっていたので。勝手にすみません。なんとお呼びすればいいのでしょうか。」
なぜそうなったのか分からないが、間違いメールが元でメールのやり取りが始まった。最初は3日に一度のメールのやり取りだったが、いつのまにか1日置きになり、ついには数分置きになり、その会話の内容も「今テレビ見ているんですけど。」などという砕けたものになった。
性別は聞かなかったけど文面から女性だろうという気がした。そしてメールで話していくうちに近いものを感じた。
ボクはその人からのメールが何時の間にか楽しみになっていた。
お正月は長野など遠くから親戚が出てきた。役者を目指している親戚の子の死体役をやった話しなど家族で話していた。しかしそんな時間も携帯にいつメールがくるのだろうかと心待ちにしていた。
親戚一同でおせちなどを食べている2001年1月1日朝11時に「あけましておめでとうございます。」というメールが着た。「あけましておめでとうございます。ボク今お節を食べています。」「あ、私も食べています。親戚のお兄ちゃんがいるんだけど、栗金団全部食べちゃって!私好きなのに!」
「それ僕かもね!ボク栗金団大好きだし。」というメールを送った時、おじさんが親戚の大学2年生の女の子が携帯メールを必死にやっているのを見て「やめなさい。」
メールが着た。「今怒られちゃったから。あとでしますね。」
イヤな予感がした。すごくイヤな予感が。こんなことってあるのか。ボクがずっとメールをしていたのは親戚のいっちゃん?
後でメールをした。「いっちゃんお年玉さ〜お兄ちゃんから貰った?もしかして2222円とか入っていたんじゃない」「え!?どうして知ってるの。」「蛇年に2222円あげると幸せになれるんだって。いいお兄さんだよね!」「へぇ〜知らなかった。そうなんだ。わたし幸せになれるかな??」
普通に2000円あげてもただの貧乏人として思われるのがイヤだったから2222円あげて面白いと思われるようにした。
ボクはその夜、メールアドレスを変えた。
あれから3年経ち久しぶりに親戚が着た。いっちゃんの腕には1歳になる赤ん坊が抱かれていた。