2003/3/24 すれ違う。

僕の家はむかし塾をやっていたんだけど、その塾に来ていた一つ年上の小学校5年生の女の子のことが好きになった。

彼女の目は鋭く切れ長だった。でもその鋭い目が良かったし、またとてつもなく頭が良かった。その後、中学受験して有名私立に入ったもんな。今は手がつけられないほどキレル女になっているだろうね。

その女の子と新百合ヶ丘っていう場所でやるクラシックコンサートに行くってことになったんだ。

塾の先生のおばさんが急用が出来てコンサートに行けなくなったんで、チケットがもったいないから、僕はピアノをやっていたしその女の子も音楽が好きだったので二人に行かせようという話になった。

相手は一つ上でキレル女だからね。もうどうしようかずっとデート…じゃないか。でもデートだと思ってた。デートが決まってから、プランを練ったもん。どうやってキッスまで行くかとか。

大人の男は無理だから、子供の男の本領を発揮しないとねとか考えて。子供なりの最強デート。

コンサートが終わった後、マクドナルドに入るっていうのは決めていた。まあ小学4年生の限界がマクドナルドってこと。26歳になった今でもマックが限界なのは変わっていないけど。

クラシックコンサートを聞いているときはやっぱり手を握らないとね。そこは抜け目なく。彼女の手に触れた瞬間僕の心には第九が流れ未完成交響曲も完成しちゃう。

そこで興奮状態のまま電車に乗って乗り換えの駅の町でマックへGO!次はマ〜ック!マッ〜ク!ってな感じ。

で、まだまだキッスはさきさきお先。お楽しみは最後にとっておく。キッスすると妊娠しちゃうし。お楽しみはこれからだ。

ゲーセンに入るんだ。エアーホッケで対戦なんかしちゃったりしたりして。彼女が「ハァ〜ン!ずる〜い♪」とか色っぽい声出しちゃって。出すような子じゃないけど、もうなんでもいいや。

ちょとさ〜その後、公園なんて散歩しちゃってさ〜。そこの町に公園ないけど勝手に作っちゃった。

そこで本日のメインディシュ。「キッスしていい?」なんて聞くのはヤボかな?やっぱり突然キッスがいいのかな?

なんてこと考えているうちにクラシックコンサートの当日になった。

当日、台風が来ていてもの凄い雨が降っていて。おばさんは、

「子供だしね〜。大丈夫かな?」とか言い出しちゃって。

アメアメヤメヤメすぐやめよ〜♪という気持ちとは逆にどんどん強く降る。

その雨の中、彼女が家にやってきた。今でも鮮明に覚えている。

茶色のチェックのスカートに、白のブラウス。首にはリボンが結んであって。あんなにカワイイ彼女は見たことがない。僕のものにしたかった。

そんな中、雨はどんどん強くなっていき子供だけでは危ないからというので中止に。

中止と聞いたとき、凄く悲しかったけど、彼女の顔を見たら楽しみにしていたらしく、凄く寂しそうな顔をした。

後で聞いたら、「わたる君と行くの楽しみにしていた。」

その言葉聞いただけで僕は満足。キッスするより嬉しかった。でも「わたる君と行くの…」と言ったときに突然キッスをすれば僕の人生は変わっていたかも知れないと思うのはヤボかな?


僕が21歳になったとき。横浜の本屋で本を立ち読みしていた。本棚の向こう側にどこかで見たような顔が見えた。あ!彼女だ。そのとき一瞬、彼女と目があった。

僕は彼女の横に行き、non-noを手にとって立ち読みを始めた。

声を掛けようか掛けまいか。20分近くnon-noを立ち読みしていた。横目で見たら彼女もnon-noを立ち読みしていた。彼女もずっと横で黙っていた。

僕には声をかける勇気がなくその場から立ち去った。僕は格好悪いし彼女は僕が声をかけていいような存在じゃないように感じた。

でも帰りの横浜線に乗っている時、声を掛けるべきだったかな〜という後悔にもさいまなれた。

ヤボな考えだけど、もしあのとき声をかけることができたのなら僕の人生は変わっていたかも知れない。でも、やっぱ変わらないかもね。

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