2003/6/15 思いでは時に人を盲目にしてしまう。

本日の東京7Rに出馬していたチョコパフェというオフサイドトラップの仔を見て思う。天皇賞秋など儲けさせてもらったオフサイドトラップ。

夫婦で競馬が好きだったTさんの奥さんが亡くなったのは、5年ほど前のエプソムカップというレースがあった週だったと記憶しています。

その頃の日記を見てみたのですが、

【前日雨で馬場重い。エプソムカップはツクバシンフォニーが勝つ。Tさんの奥さん死んだことを知る。】


今から8年ほど前、僕は馬券を頼まれて買いに行くということをやっていて、20人ぐらいの方から頼まれていました。Tさんはその馬券を頼む一人でした。

Tさんの奥さんは競馬をやらなかったのですが、夫が定年を迎え夫と同じ趣味を持とうと思い競馬を始めたそうです。旦那さんが、「お母さんの方が夢中になってしまったよ。」

二人には子がなかったのですが、逆にそれが二人を仲睦ましくすることもあるということを知りました。

僕が奥さんと最後の会話をしたのが、エプソムカップに出馬する登録馬が発表された月曜日。

「わたしは、オフサイドトラップが好きなんだけど、どう思います?」「オフサイドはもう8歳ですからね。上がり目となると…?」

「そうね。わたしなんかと同じね。もう下がり目ね。でもオフサイドトラップ好きだから。」

8歳といえば馬の社会では定年退職する年齢。

その週の土曜日にTさんのお宅にいつものように電話をかけました。

「今週のエプソムカップは何を買います?」

旦那さんは、「そうですね。私はツクバシンフォニーを買おうかな。」「奥さんは買わないんですか?」

「いや、死んじゃったんだよ。元々心臓が弱かったでしょ。水曜日に倒れてそのまま。本当は競馬をやっている場合ではないんだけれども、そういえばお母さんは何を買うと言っていた?」


「オフサイドトラップ買うって言っていました。」


「そういえばオフサイド、オフサイド言っていたな…。そういえばデビューからずっとオフサイドトラップを買っていた。悪いんですがオフサイドトラップの単勝を1万円買っておいてください。」

「分かりました。オフサイドくるといいですね。」

「いやツクバシンフォニーがくるよ。わっはは…。」

エプソムカップを勝利した馬はツクバシンフォニー。オフサイドトラップは下がり目なのか3着だった。

しかしその後、下がり目だと思っていたオフサイドトラップは重賞を連勝、その勢いで日本一のレース天皇賞秋も勝利し今はオフサイドトラップの子供がターフを駈けぬけています。


そして思いでに浸った今日、オフサイドトラップの仔チョコパフェに賭けた僕の1枚の福沢諭吉さんと3枚の夏目漱石さんも何処か見知らぬ場所へと駈けぬけて行ってしまいました。


そして家に帰り競馬新聞を見返すと、僕がオフサイドトラップの仔だと思いお金をかけたチョコパフェはケントニーオーという違う馬が父親でした。思いでは時に人を本当に盲目にしてしまいます。

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