両親が僕の家にきてソファーに座り父が一息ついて、
「おまえのところは吐血してないな。俺のところは吐血が酷くてな。」
「え!?大丈夫なの?」
父は5年ほど前に癌になりました。前から体調が悪いといっていましたが病院に行かず、家で大量に吐血をして救急車で運ばれ癌と分かりました。
父がいう通り僕はまだ吐血をしたことはありません。吐血がひどい父はまたしゃべりました。
「なにしても吐血しちゃうんだよ。拭いても拭いても吐血するんだよ。」
それを横できいている母はおろおろして視線が泳いでいます。
今は我慢しているのか父は吐血をしていません。家を汚してはいけないと思っているのでしょうか?
そういえば、父の顔色がくすんで見えます。癌と気付く前もこのような顔色でしたが気付きませんでした。ひどい顔色です。
病院嫌いで倒れるまで病院にいきません。もしかして吐血し過ぎて吐血慣れしたのか?
家にきている場合ではない。のんきにソファーに座っている場合でもない。一刻も早く墓の用意が必要かも。ただ、今は墓を買う金がない。
僕が癌の手術前に、「お墓ないから死ねないな。」といったら父が「そのあたりに蒔いてくれ。」
やだな。きもちわるいな〜。粉々になった骨なんて蒔きたくないな〜。蒔いたとき風が強くて口から吸ったらどうすんだよ。僕が墓かよ。墓を自分で買って静かに墓に入ってくれないかな。
そんなことを思い出しました。
手術が成功し元気になったと思ったのに、吐血を続けているという告白をする父がまたしゃべりました。
「おまえのところは2重だからか?おれんところシングルだから吐血するのかな?」
父の吐血を何度も見た母は気が狂ったのか、ナンバーワンといわんばかりにいきなり右手の人差し指を天にかざし、
「見つけた!あ、あそこのところ結露している。」
父が嬉しそうに、
「お、あそこの天窓はシングルだから吐血しているのか。おまえのところもかなり吐血してるな〜。新築なのに吐血か!欠陥住宅だな!!!!作った大工が下手だな大工がぁ!」
そうです大工さん。息子もかなり吐血しています。それもかなりの欠陥です。
3歳の息子が盛岡に帰省して自宅に帰ってきたら、
「よしえさんこわい。よしえさ〜ん。よしえさ〜ん。おばけみたいねぇ〜。」
と連呼するんです。
よしえさんというのは、ETさんのお母さんの名前なんです。
帰省中に怒られちゃったりしたのかな?でもそこまで「よしえさんこわい。こわいこわい。」と連呼しなくても。
寝起きに、「よしえさんこわい。こわい。おばけみたい。」
夢をみていたようです。
しかしですね。おばけみたいっていうのはひどいなと思ったので、
「よしえさんやさしいよ。」
と息子にいうと、
「よしえさんスキ。おばけみたい。」
息子はおばけみたいなよしえさんが好きなのかと、これは複雑な息子心だ。
数日が経ち、youtube好きなかんいちろうが何を見ているのか履歴を見たところ、
「よしえさん 恐怖の森」
【
LINK】(観覧注意ですがグーグルの検索結果です)
という動画を見ていました。
これのせいだったのか。
たしかにこいつはこわい。トラウマになってしまう。
セーフガードしていたんですが。よしえさんはそれをすりぬけて…。
息子は帰省して覚えたよしえさんという名前にひかれたのか、この動画を見ていたようです。
ETさんに原因が分かったと動画を見せてところ、
「ママと色が白いところが似ているからかな。」
こんな動画を見せてしまった僕がいけないんだ。ETもETだ。宇宙へ帰れ。
自責の念にかられて壁に何度か頭を打ち付けながら履歴から全ての悪魔を削除しました。
そのお陰か息子は、
「よしえさんこわい。おばけみたい。」
といわなくなりました。
数日後、盛岡からりんごがとどきました。
「これ盛岡からとどいたリンゴだよ。」
と息子にいったところ、
「盛岡のよしえさんこわいねぇ〜。口がねぇ〜赤でおおきいの。しろいおばけみたいねぇ〜。くるねぇ〜くるねぇ〜。」
場所指定のよしえさんになってしまいました。
こんな息子に育てた僕が死んでおばけにならなきゃいけない。そう思いながら今年も生きていこうと思います。よいお年になりますように。皆様にとっても家族とっても僕にとっても。