2021.1.12 Tue.
長男は人徳なのか良く人から物をもらいます。今年は既に老夫婦から、くら寿司でガチャを貰っていました。
僕が小学生の頃、学校に行く途中に鰻屋がありました。
登校中に、鰻屋さんの前を通ると、30歳ぐらいのおじさんが「おはよう!!」と挨拶をしてきました。
その頃は、素直だったので「おはようございます。」
下校中、鰻屋さんの前を通ると、30歳ぐらいのおじさんが「おかえり!!!」と挨拶をしてきました。
僕もその日はいつになく大きな声で「こんにちは!!!」と返事をしたら、「坊主!!焼き鳥あげるよ!!好きなもの持っていきな!」
店先にある焼き鳥を指差しました。鰻屋さんですが、焼き鳥もおいてあります。
当時は断るということもできなかったので、僕は一番安い一本30円の「ハツ」を貰って食べました。僕はデブだったのでハツよりも甘いタレのカワが好きでした。でもカワは一番高くって一本50円します。
小さな遠慮をしました。
それからです。坊主!焼き鳥食べな!毎日ハツを食べながら帰宅するようになりました。
毎日もらうのは気が引けるのでたまに遠回りをして帰ったこともあります。そうすると、「なんだ!昨日は風邪でも引いたのか!元気出せ!3本食べな!」
普通は2本だろうになんで3本なのかと思ったんですが、おじさんの勢いにおされ3本取る羽目になりました。
ハツを3本取るのは気が引けるので、ハツ2本と、好きではないレバーを取りました。
僕が引っ越すまで、焼き鳥を下校する度にもらいました。小学校3年生から6年生までなので、計算すると約3万円ほどの焼き鳥を貰ったことになります。
卒業式あった日の下校途中に、鰻屋さんの前を通ると、「お!今日ははえぇ〜な。卒業式か!おめでとう!ほら焼き鳥持っていきな。」
「あ、どうも。」
いつものようにハツを取ろうとすると、おじさんが「ハツはまだ仕込んでいないんだよな。だから袋にはいっているこれ持って、家で食べな。」
僕は、卒業証書と焼き鳥を持って家に帰りました。袋の中には甘いタレの皮が5本入っていました。
その鰻屋さんのお兄さんと、夜にラーメン屋さんで会ったことがあります。僕は父と一緒でした。
うなぎ店にいる威勢の良いお兄さんではなく、「あ、どうも。」というような、静かな他人行儀な挨拶でした。35年ほど前の話です。
15年ほど前に、妻と僕が育った場所に行き散歩をしました。
「おつまみに焼き鳥を買って帰ろう。」
あの時のボクです。あわよくばオマケをしてもらおうと思ったのですが、街並みは変わり、そこには鰻屋さんはもうありませんでした。