そろそろ夕飯だなと思って部屋のドアを開けて廊下に出たら、うんち臭い。すごくうんち臭い。
そこに犬のキャビアが上目使いで僕を見ていた。「お前か〜。うんちしちゃったのか?」
キャビは首を傾げた。キャビがうんちをするなんて珍しい。我が家にキャビがきて約8年になるが、家の中でうんちをしたことは3回もない。
うんちを探して廊下をくまなく見たけれどうんちが見つからない。しかしうんち臭い。これぞザ・ウンチというニオイだ。鼻が曲がりそうである。
リビングに父がいたので、「すごい臭い!!キャビがうんち漏らしたみたいなんだけど…。」
と言ったら父が口の前で手を振って黙れというポーズして祖母の部屋の方を指差した。
「え!?ばあちゃんがうんち漏らしたの?」
「バカ!?お前!声が大き過ぎる。」
「え!?」
父が声をひそめて、
「いや違う。オフクロ(祖母)がトイレでうんこをした。ほら換気扇壊れているから…。」
あ、そうだ!2週間ぐらい前から換気扇の調子が悪かった。それで今日完全に壊れたのか。それでうんち臭いんだ?しかしそれにしてもうんち臭過ぎる…。
「え!?でも換気扇が壊れただけでこんなにうんち臭いの?」
「ばか。お前。うんこだぞ。お前のうんこだっていい勝負だ。家族で2番目に臭い」
父が僕のうんちも臭いと言い出した。僕も反撃にでる。
「おじさんだって(家では実の父をおじさんと呼んでいる)トイレで煙草吸ってウンチの臭いごまかしているじゃん。おじさんの後のトイレはうんちが臭いのか煙草が臭いのかよく分からない。」
「オレのうんこは臭くない!!お前のうんこが臭いのは内臓が弱いせいだ。オレは酒で鍛えている。自分のうんこのニオイは自分じゃ分からない…。しかし本当にこのうんこは臭いなぁ…」
言い合いをしていて忘れてはいたが、先ほどより臭くなった。そこで母が100円ショップダイソーで「犬用の消臭剤」として購入したラベンダーの香りの消臭剤を撒いた。
絶妙に混じる。混じる。うんちが混じる。出会いと別れを繰り返し。ラベンダーとうんちが融合。
うんちの臭いと安物のラベンダーの香り。ここはどこ私はだあれ?何だか目が痛くなって喉も痛くなってきた。
父が涙目になって、「これはひどい。な、なんなんだこれは…。うぅ…。お前のうんちより臭い。いやおばさん(母のことはおばさんと呼んでいる)よりも臭いぞ。」
「あら、お父さん(母は普通に呼ぶ)の方が臭いわよ。」
「わんわん!」喧嘩だと思ったのかキャビアが吠え出した。いや、犬も臭いのか?
そこにおばあちゃんが部屋から出てきた。「なんだい。この臭いは。食事時に。」
それはあなたのクソのニオイのせいですとは誰も言えない。
夕飯のハンバーグがうんちに見えて殆ど食べられませんでした。食は味よりもまずは部屋の空気だと思いました。
川崎競馬場に行ってきました。
川崎競馬場に行っていつも思うのですが、川崎の駅から競馬場への道が凄いですね。誰もが最初通るときは時代を間違えたのかと戸惑うと思います。
割烹料理と称したお店があるんですが、そのお店の食材は僕というようなお店なんです。もう下半身がカッポウ!!という感じです。メンズエステには笑いました。どこを揉むんだという話です。
そこにある割烹料理と称したお店はガラス張りになっており、最小限の下着をつけたほとんど全裸の女性というか、中には女性というべきなのかというような人が上がりかまちに座りこっちを見ているわけです。昼間からです。
僕はあそこを通るのは好きなんです。競馬が終わると川崎の駅を目指してぞろぞろおじさん達と一緒にその女郎街を通るのですが、ガラス張りから見える上がりかまちに腰を掛けている女性をちらっとおじさんが見るんですね。
60過ぎのおじさんもいるでしょうか。ちらっと見るんです。ほとんど全裸の女性をちらっと見るそのおじさんがたまらなく好きなんです。決して直視しない。そこにわびとさびがある。
悪趣味と言われようとも好きなんです。あ〜おじさんも男だな〜と思って。
いや、僕も女性が好きです(今更なことですが一応)
そして僕もちらっと見るんですけどね。いや、見たくなくても男性という生き物として悲しいかな視線が無意識に飛んでしまう。別にどうこうするわけではなく。
僕もそれが分かっているんで、年齢や身分など関係無くおじさん達もあ〜あそうなんだと思ってそのちらっと視線を飛ばす情景がたまらなく好きなんです。男性の呼びこみの人は苦手なんですけどね。

「お前は味噌汁を飲まないんだから…。」と言われても味噌汁が食卓に並んでいないと落ち着きません。
僕が子供のころ父は、食事中のマナーに厳しい人で、肘をついて食べていると「ヒジ!」寒いので片手をコタツに入れて食べていると「片手だけではしたない!」
口を開けてテレビを見る子供だったので、「口開いてる!」
ってそれは違いますね。そういってよくちゃぶ台を叩かれたものです。ちゃぶ台を叩くなんて父が一番マナーが悪いじゃないかと思っていたのは小さな反抗です。
そんな僕が食事中に一番注意されたのは「また味噌汁を飲んでないぞ!」でした。その癖は20年経った今も治らず味噌汁を飲み忘れます。
かといって味噌汁が食卓に並んでいないと何か忘れ物をしてきているようで不安なんです。
そしてその味噌汁の具には納豆が一番。だから味噌汁には納豆を入れてくれと母や祖母にほとんど飲まないくせに頼みます。
しかしこの納豆という政党は我が家では、過半数を得られません。我が家の首相こと父が【納豆味噌汁法案】を承認しないからなんです。
「味噌汁に納豆入れるなんて臭くて飲めたもんじゃない。頭のおかしなお前みたいな人間のすることだ。」
父は納豆は大好きなんですが、納豆入り味噌汁は嫌い。分かりやすく言えば、民主党は嫌いなんだけど小沢一郎さんは好きみたいなそんな感じなんです。
「お前はまた飲まないんだろ?」
そう言われると僕も意地になります。
「ああ、絶対に飲まないよ!でもね。味噌汁には納豆が金婚式を迎えた夫婦のように一番合っているんだ。臭い仲〜♪あ〜あ臭い仲〜♪(歌い出す)それが分からないなんて味覚障害だね。タバコ吸っているせいだ!アホだ。アホ。」
そして松田家の食卓が険悪なムードになります。でも僕はこの納豆に味噌汁を入れる行為を止められません。というか止めません。
例え死ぬほど愛した人が「わたし味噌汁に納豆を入れるの大嫌いなの〜」
僕は人を愛することを止めても納豆入り味噌汁は止める気がしません。
野にひっそりと咲く月見草のように食卓にひっそりとある納豆の味噌汁。君はなんて美味しそうなんだ。今まで気付かないでごめんよ。でも飲まないよ。
「お前また飲まないんだろ?」
そう言われると何だか安心する自分がいるのが不思議です。
昨日は久しぶりに町田までの電車賃150円を浮かすために約10キロの道のりを歩いた。いつも車で通り過ぎる道を歩いてみると景色が変って見える。
こんなところにこんなお店があったんだ。初恋の子の家の前。仲が良かった友達の家が合った空き地。歩いていると丁度帰宅時間の小学生に出くわした。広い道を通ればいいのに、細い道、いや隙間を無理に通りぬけようとする子。いきなり木に登り出す子。遊び方は変ったであろうけど子供の好奇心は変っていないなと思い何だか安心した。
自宅から町田まで別に急ぐあてもないので約二時間ゆっくりと歩いた。
当初は電車賃150円を浮かすためというせこい理由から歩いて行こうと思ったのだが有意義な時間であった。
しかし失敗もあった。150円浮かすためのはずが、ペットボトルのお茶を買って町田についてから喉が渇きドトールに入ってしまったことで予期しない出費650円。急げば周れということわざの意味も理解したが、また別のことわざの意味も分かったような気がしました。安物買いの銭失い?それは違うか。
こちらも更新しないと!という訳で、トップがブーブー丼となっております。なんだか母のお店に僕の知り合いが行ったそうなんですが誰だか分かりません。
ご年配の方だということで、以前の職場の関係でしょうか?お腹を壊していなければいいのですけど…。
「まつだわたるの知り合いです。」というと食べきれないほど大盛にしてくれるそうです(未確認)関取を目指す方はお試しあれ。
お店は町田の東急ハンズの近くにあります。ケントという名前です。1階は居酒屋で2階がケントです。薄暗くとても入りにくいお店です。息子の僕ですら2年ぐらい行っていません。息子の愛想の良さに比べて母の栄子さんは無愛想なので感じの悪いお店となっております。
先ほど仕入れた情報によれば、モーモー丼もあるそうです。たいがいにしておけという感じです。この分だとコケコッコー丼とかありそうですけど、それは無いそうです。だけどもっと凄いネーミングのメニューがあるみたいです。つづく…(商売上手)
昨日は知人とお酒を飲みに行ったせいか二日酔いです。と言っても想像妊娠みたいな想像二日酔いですけどね。酒には酔わず雰囲気で酔っちゃうタイプです。
まあ最近はお酒を少々飲むようになったのですが、昔は一滴も飲まなかったので割り勘だと損をした気分になりました。
実際にはおつまみ食べまくりで損はしていないと思うんですが、「お酒飲まないと割り勘だと損だよね〜。」とか言われてしまうと、損しているんだと想像損、いやいや被害妄損とかいう感じになってしまいます。
酒は百薬の長などと聞いてはいたのですが、お酒は美容と健康に悪い。美容を気にする僕にとってお酒は美味しいものとは思わなかったのですが、料理に合わせ飲むと料理が際立つということに気付きました。
だから最近はお酒を少し飲むようにしています。それにお酒を飲まないと運転手としてボロ雑巾のように大活躍することになるので、そういう理由からちびっと飲むようにしています。
お酒を好まない理由の一つに家族が全員飲んだくれで祖母がキャバレーをやっていたというのがあって。お客さんなど小さい頃から飲む人を見てきてあまり良いものではないな〜と。それが反面教師になり自粛していました。
今では楽しくなるための道具として酒があっても良いのではと思うようになりました。
しかし飲むと言っても僕にとって酒は料理あっての酒。酒だけ飲んで美味いな〜という人の気持ち。未だに分かりません。お子ちゃまですのー。
父と競馬場に行ってきた。

父は競馬をやらないせいもあり今までそういう機会がなかったので少し新鮮に感じた。それにいつもより優しいオヤジに感じたのが恐いといえば恐い。ほら、死を感じているとかで。まあ個人的に死にそうな人が好きだというのもある。
冗談ではなく父もそういう死を感じる年齢といえば年齢になったのかなと思う。時々「オレが死んだ後…」ということを口にするし。そういう心配を掛けている子も子だけど。
ただその前に祖母からはまったく死を感じず死にそうにないので、色々な意味で父も焦っているような気がします。
子供の頃に苦手な人が一人はいると思います。
僕はおばさんが苦手な存在でした。
小学校3年生の時でした。
加松書店でファミリーコンピューターマガジンを買って出てくると、20mぐらい先におばさんがいました。
子供の頃の僕は勉強勉強の毎日でした。おばさんが家の一間を使い塾をやっていたこともあり帰ってくると毎日塾に通っていました。テレビは毎日2時間。そのうち1時間はニュースを見ること。本を読むならフランダースの犬などの活字と言われるもの。そして感想文を書く。
感想文は本を冒頭の5ページと最後の5ページ読めば書けるということを学びました。
漫画は目の「毒気の毒頭の毒」読んではいけないもので見つかると捨てられてしまいます。
僕は自転車に乗って弟に「早くしろ。」「なんで早くするんだよ〜。」「いいから走れ。」
そう言っておばさんに見られていないことを祈り必死な想いで自転車を漕いで家に帰り二段ベットの下にファミリーコンピューターマガジンを隠しました。
「わたる。ちょっと来なさい!」
おばさんが僕を呼ぶ声がしました。やっぱり見つかっていたんだ。怒られる。お小遣いで買ったファミマガも没収だ。僕はうな垂れておばさんに怒られにいきました。
「わたる。悪いことしたでしょ?悪いことしていなければ逃げないわよね?」
そう言って一発頭にグリグリパンチを受けました。
ここで反攻しては怒られる度合いが倍になります。ここは素直に「ごめんなさい。」
「自転車まだ外で乗るの禁止って言われたでしょ?なぜ守らないの!」
え!?もしかしてファミマガを買ったのを怒られたんではないんだ。違うことで怒っている?ファミマガは没収されないんだ!怒られているのに僕は心の中でガッツポーズをしました。
あれから20年経ちそのことをおばに話しました。「そんなことあったんだ。」
あの頃は毎日毎日が嫌でし方がなかったのですが、あの頃があるから今がある、そう思えるようになりました。今はいい思い出です。
おばも性格が丸くなりました。20年かかりましたが、やっと話せるようになりました。
「わたる。最近おばあちゃんに冷たいそうじゃない?」「いやそんなことないと想うけど…。」
しかし今でも苦手なものは苦手です。
昨日はそうでも無かったのですが、本日起きようとした所、腰が痛く起きあがれないのでお家で静養中であります。
体を動かすことができないというのはこんなにも辛いことだとは思いませんでした。蛇口を捻ればお湯が出るのは当たり前ですが、ガスが壊れたことがあって真冬にも関らずお湯が出ないことがありました。真冬に水で手を洗い髪を洗う。
寒いを越えて痛いので「おっしゃー!」と気合をいれていました。ギャグも寒いを越えると痛いのかも知れません。
お湯が出ないことを体験してお湯が出ることの有り難味を知りました。
五体満足なことに感謝しなければなりません。現在僕はおじいちゃんです。
我が家族は受難です。弟はバーベルを上げているときにギックリ腰になって歩くのもやっとの状態。父は父で左肩が上がらない。犬のキャビアさんの背中にはコブができている。
何かこの家に取り付いてでもいるのでしょうか?日に日に大きくなるキャビアさんのコブが原因ではないか?という話しも出ています。
しかし祖母と母はすこぶる元気です。
厄払い厄払いと!
日曜日の朝日新聞に
【お祭りの金魚、びっくり長寿 飼い主に聞く育て方のコツ 】という記事が掲載されていた。
「普段はほったらかしでも、何かあった時の対応は早く。子育てと一緒ちゃいますか」
子供を育てるマニュアルというのがあるらしいが、記事にもあるように長生きした金魚は一般的な「正しい育て方」に反するケースも多い。教育のマニュアルはどこまで適応するべきなのか。
母の実家のお店にも20年近く生きた金魚がいた。別段何もせず名前もつけずにいたらしいが長生きした。あまり手を掛けてもかえってストレスになるのかも知れない。
人間もそうであると思う。老人を長生きさせたかったら老人扱いしないというのがポイントなのではないか。
老人だからといって電車で席を譲る僕は、実は悪魔かも知れない。でも僕の前に「老人ですから」というような人が立ったら席を譲らないと良心が痛む。
譲ろうと声を掛けたら「いえ。結構です。」
そして車内にいる人々の視線を感じながら元の席に座る。この空気が僕の寿命を確実に縮めている気がします。
予想しましょが案外ひどい結果になっていますが、ええ競馬の楽しさが分かれば良いんです。でもあそこまで当らないとまったくもって楽しくないぞぉ〜!(彼女ふう)
重賞というよりもホンマに重症って感じでそろそろ当てないと自分が埋まるための穴を掘るようになります。最近馬券の調子が最悪なのですよ。もう普通にやれば外さないだろう思って、ちょっと予想法を変えたら…!
当らないがな!アタラな過ぎ!!豊臣秀吉も天下を取ったらおかしくなっちゃいましたけど、だいたい人間極めるとおかしくなっちゃうんですよね。
IGOT ITというそうですが、僕には「ア!ガリガリガリガリ!寿司くいね!」と聞こえます。寿司の部分ちょっと誇張しています。
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中学2年生の親戚の子が全日本吹奏楽コンクールで全国2位になりました。音楽で有名な高校を受験してその後は、ヨーロッパに留学したいと言っていました。中学2年生でしっかりとした夢を持っている。感心してしまいました。
僕の父がプロのジャズピアニストだった影響もあり僕は22歳までピアノをやっていました。16歳の頃、毎日のように親戚の家にピアノを練習しに行っていました。ピアノを練習していると2歳になる親戚の子が覗きにきます。
「私もピアノを弾きたい」そう言って僕のピアノの練習の邪魔をしていました。でも怒るわけにはいかず、「じゃあこれを弾いてごらん。」
その後彼女は先生について本格的にピアノを始めて見る見るうちに上達していきました。僕はといえば壁にぶち当たり(と言っても低次元の壁)ピアノを辞めてしまいました。
現在、彼女はクラリネットが専門のようです。彼女の家に行くと「お兄ちゃん伴奏してよ。」と言われます。「いいよ。いいよ。」既に彼女のレベルは相当な物なので恐くて伴奏できません。伴奏ですら恐いのです。
うんじゃ〜オレが弾くかと父が変わって伴奏をしてくれます。そこで「お前も何か楽器をやれ」と言われてしょうがなくハーモニカを吹くという情けないことをしています。
「私が音楽を始めたのはお兄ちゃんのお陰かもね。」
僕は父の影響からピアノを始め、僕が練習をしている姿を見ていた彼女が音楽の道を志そうとしている。僕のヘタクソなピアノも少し役に立ったのかと思うと音楽をやっていて良かったなと思いました。
僕は勉強ができないので、難波さんの隣りに座るように言われた。なんで難波さんの隣りに座るように言われたかというと難波さんは勉強ができたから。先生は勉強ができる難波さんの隣りに座れば僕もちょっとはマシになるだろうと思ったんだろう。
僕はちょっと可愛くて勉強ができる難波さんっていう女があまり好きじゃなかった。優等生なんだよね。だから難波さんの隣りの席に席替えされたのは本意じゃなかった。
鼻くそ攻撃を難波さんにやっても対応が大人なんだ。実際鼻くそなんてついていない。でも穿った手で難波さんに「鼻くそつけるぞ!」って脅すんだけど、「どうぞつけてください。」あれには参ったね。
どうぞつけてくださいと言われたらこちらとしちゃ〜面白みがない訳よ。ちょとイヤイヤしてくれないと。ほらドラマのベットシーンなんかでも「いや。ダメよ。昼間から。」とかいうから、いいんじゃない。
そういうの知ってか知らずか鼻くそ攻撃を真顔で交わして難波さんは、「さあ勉強しましょう」だもん。やってらんねぇ〜よ。正直。
算数なんて特にできなかったね。デシリットル?なんてでてきた日には、僕の脳のデシリットルは一杯一杯。
でもそんなバカな僕でも難波さんは一生懸命教えてくれる。これはこうだってね。先生に答えなさい!と当てられても応えられる訳ないじゃん。そんな時は神様仏様難波様はこっそり教えてくれた。
ある日、僕だけ教室に残って図工の時間の絵を書いていたの。いつもなら絵なんて一番に描き終わる。それで早く終わった子は、校庭で遊んで良かったり、「後は自由時間です。」なんてラッキーなお時間。図工の時間はそれが楽しみ。
でもなんか絵が気に入らなかったんだよね。上手く描きたかったんだ。いや描かないといけなかった。
それで放課後、学校に残って絵を仕上げていたんだけどお腹が痛くなってウンチをしたくなった。でも学校でウンチなんてできないでしょ?トイレ汚いし、そんなことしているうちにウンチ漏れちゃったのよ。
1度緩んだらあれはダメだね。もう壊れちゃった。一瞬天国。でもそのあと地獄。ウンコ臭いったらありゃりない。体そう着に着替えようと思ったらそういう日に限って体そう着がないの。
学校から出るのは平気だとしても帰り道でさ〜。友達に会ったら最悪じゃん。ウンコ漏らしたって明日からウンコスターだよ。小学生ってさ〜。ウンコだけは特別でしょ?最悪だよ。
でも帰るしか道はないんだよね。だけど走ってなんて帰れないんだよ。ウンコが半ズボンに染みちゃってるし。半ズボンの腿の隙間から垂れてきてるし。
シミとかバレたらまずいから、ランドセルを浅めに背負ってお尻を隠して帰ることにしたんだけど…。
そうしたらランドセルにウンチついちゃってランドセルが黄ばんじゃった。シミを隠すだけで一杯一杯なのよ。デシリットルも分からないアホだから。
でさ〜。そこを曲がれば下駄箱だと思って曲がったら…。
難波さんがいた。難波さんが僕を見て「くさい。」と言った。「うんち漏らしたの?」僕は「へへへ」と笑うのが精一杯。内股で下駄箱に向かった。
家では親に散々怒られた。
翌日ランドセルはウンチのため使えないので、学校を休もうと思った。ウンコマンとして今後生きていかなければならないと思うと暗雲たちこめて。
でもさ〜。覚悟を決めて勤めて明るく学校の門を潜ったのよ。
でも僕ウンコマンじゃなかったのよ。大丈夫だった。リュックを背負っていたのも大丈夫。怪しまれなかった。そうだよね。そんなに心配することなかったんだ。
学校が終わってから難波さんを待ち伏せして礼を言った。「黙っていてくれたんだ。ありがとうな。」
「でも条件があるの。今度の算数のテストで100点を取ること。でないとばらすわよ。」
そんなこと言われたら100点取るしか道はない。僕は算数のデシリットルの問題のテストで100点を取った。
その100点の答案を持って何か買ってもらえるかもな〜とルンルン気分で家に帰る途中、難波さんがいた。
「目をつぶって!」「なんで目をつぶらないといけないんだよ。」「言うわよ。」
そう言われたらもう言うことを聞くしかない。目をつぶった。
唇にショートケーキが広がった。唇が濡れた。キッスされた。
「汚いな!何するんだよ。」「あなたの方が汚いじゃない。」
初めてのチューだった。汚いと思った。でも苺の味とかレモンの味とか聞いていたけど本当に苺の味がするもんだな〜と思った。
その後、僕は難波さんに「言うわよ」と何度も脅されてテストで100点を取らなければいけなくなった。95点しか取れない時もあったけど、その時は「次ぎ取らないと言うわよ。」と脅された。
脅されて脅されて僕の小学校時代は終わった。でも僕は一流中学の受験を勧められるような頭になった。
難波さんは中学になって【ろさんじぇるす】とかいう遠くに行った。
駅のホームで電車を待っていたら肩を叩かれた。振りかえったら、170cmぐらいある女の人に「お元気ですか?憶えいます?」と声を掛けられた。
「誰ですか?」「ウンチ漏らしこと言っちゃおうかな〜。」
「あ、あ、元気だよ。」僕はその場をほうほうの体で逃げ去るように電車に乗った。
家に帰って押入れから小学校の頃に書いた絵を何枚か取り出した。その1枚に難波さんの顔を描いた絵があった。我ながら上手く描けている。先生に隣りの席の人を描きなさい。そう言われて描いた絵だ。
最初早く終わるように、へのへのもへじ風に描いたら難波さんが「上手く描かないと抓るわよ。」
あれから15年ぐらい経ったけど難波さんは変っていなかった。いや以前よりも迫力を増した。偶然の再会で恋に落ちるという結末も考えられるが、こういう女子からは難波走りで逃げ去りたい。
前を歩いていたおじいちゃんが五十円を落としたのに気がつかない。次ぎの電車に乗りたかったのと五十円だしいいよなと思って見過ごしてしまった。
今思えばいくら急いでいるからといって「五十円落としましたよ。」ほんの数秒で済むことである。悔やまれてならない。
このことに限らず声をかける。例えば、切符を上手く買えない老人に対して声をかけたり、最近そういうことに躊躇してしまう自分がいる。何を躊躇しているんだと後で後悔する。
大きなことはしなくていい。大きなことなんてできないのだから。ほんの少しすればいい。それしかできない。しかしほんの少しのことなのに、それができない。それはいけないことだと思う。
今度五十円を落としたおじいちゃんを見かけたらそっとその五十円を拾って「5円落としましたよ5円。」そう声をかけようと思います。